【報告】オランダ学校視察の旅② テクナジウム(研究開発コース)がある学校その2

2018年10月16日 2 投稿者: JUNJUN

オランダへ学校視察に行ってまいりました。

その視察報告その2ということで

2校目の報告をいたします!

 

1校目のレポートはこちら

 

2校目は、中高一貫校の
ヘリットリットヘルドカレッジ(Gerrit Rietveld College)です。

この学校も6年制、5年制、4年制があります。

今回は、副校長先生が案内してくださいました。
(背が高くてイケメンの先生でした 笑)

訪問した時は、夕刻だったためあまり学生がいなかったのが
残念ですが

 

ここでは学内全体を見学させていただき
学校について詳しい説明を聞くことができました。

 

2つのオドロキ

 

まず1つ目のオドロキは、教師の割合です。

1340名の学生
90人の先生
30人のアシスタント

つまり・・

学生約11人に対して1人の教師という割合です。

学生と教師がしっかり向き合える体制が
できているんです。

※この学校だけではありません。

2つ目のオドロキは、教室です。

教室は、自習ができるオープンスペースと
講義を聞くクローズドスペースがあります。

 

明るく広々としたオープンスペース

各自の学習ペースで勉強を進めることができるのは
オランダ教育の特徴ですね。

 

職員室までオープンカフェみたいになっています。

基本、職員室では仕事をしないそうです。
他の教員や、学生とのコミュニケーションの場という
位置づけなんです。

その代り、教室のとなりに先生の作業部屋があって
学生と近い場所に先生がいる、という感じがします。

 

教室の隣にある先生のお部屋。

 

テクナジウム

この学校でも、テクナジウムコースがあります。

2005年からテクナジウムを取り入れている
ベテラン校です。

1年に約20のプロジェクトに取り組むそうです。

テクナジウムのポスター

 

ここでのプロジェクト例は・・・

食品会社の依頼で
乳製品でカフェインフリーのエナジードリンクを作るプロジェクト

税務署や水道所など公共の建物跡の活用プロジェクト

公園設計プロジェクト

宇宙開発機構の依頼で
月に永住する方法プロジェクト

保健機関の依頼で
子宮頸がんワクチン接種普及プロジェクト

など多種多様です。

 

予算は、
保護者会費、寄付、クラウドファウンディング
などで賄っているそうです。

依頼の企業や団体の負担は、
課題を提供することと、
時間を提供すること(プレゼンや打ち合わせなど)

と、役割がはっきりしているのも印象的でした。

 

テクナジウム担当教員

テクナジウムを担当する教員は、
4日間の特別研修を受ける必要があります。

研修で学ぶ内容
・コーチング
・プロジェクト設計
・企業とのコンタクト
・生徒のサポート(コンピテンシー)

研修後は実践しながら学び、
合計2年で資格を得ることができます。

教員の姿勢は、
「質問を質問で返す」というものです。

個人の価値観を押し付けるのではなく、
相手から答えを引き出す・・・
まさにコーチングの考え方です。

といっても、テクナジウム担当教員も
普段は講義型の授業も担当している先生。
つまりティーチングとコーチングの二刀流
なんです!

 

そこで質問してみました。

「切り替えが大変ではないですか?」

 

すると、こんな回答が。

「キャリアのある先生がサポートしたり、
テクナジウム担当教員は何人かでグループを作っており
グループ内でサポートしあうしくみになっています」

 

先生たちも、グループで助け合いながら
対応しているんですね。

 

テクナジウムのQ&A

テクナジウムベテラン校ということで、
いろいろ質問させていただきました。

テクナジウムの課題は?
⇒スタート時(2005年)は担当教員が3人で風通しが良かった。
今は11人態勢なので、いろんな価値感や考え方の先生がいる。
それらを共有することが大変。

⇒フィードバックが必要であること。
保護者、企業や団体、生徒自身と関係者が多い。

⇒学生が取り組むための新しい課題を
常に探さねばならない。

テクナジウムの評価について
⇒個人評価(自己評価、グループメンバーによる評価)と
グループ評価(企業や先生による成果やプレゼンに対する評価)
がある。

テクナジウムが社会に与えた影響は?
⇒かつてオランダは理系人材が少ないことが問題だった。
製造業の社員は海外から雇用しているくらいだった。
テクナジウムコースを出た学生は自分を知ることができた、
学んだことが大学へ行ってからも大いに役立つ、ということで
満足している。
学生たちは、人にフィードバックを言え、かつ
自分も素直に受け取れるようになったと感じている。

 

テクナジウム財団

テクナジウムは、2003年に保護者2名が発案し、
2005年に財団登録しました。

2005年のスタート時は、ヘリットリットヘルドカレッジを
含めた15校で導入していましたが、現在は94校にまで増えました。

財団では能力の内容や先生に求める能力の指針をまとめていて、
学校はそれに従って進めるのが基本ですが、最低限の要求事項しか
ありません。

評価方法は自由で、各学校の裁量で行っています。

2年に1回、財団から先生や生徒へのインタビューがあったり
書類提出を求めるなどして品質を保っています。

オランダ国内のテクナジウム実践校が5~6校で
グループネットワークを作っていて
互いに先生同士コーチングやコーディネートをしています。

ご参照:テクナジウム財団HP(オランダ語です)

 

まとめ

1校目では現場を見させていただきましたが、

2校目のヘリットリットヘルドカレッジでは
テクナジウムの基本的なことを知ることができました。

1校目とセットでテクナジウムの理解を深めることができて
とても有意義でした。

テクナジウムってもともとは理系人材を増やそう
という意図があるので、
「ものづくり」的な要素が濃いイメージでした。

でも、この考え方は、
国際協力とか、地域づくりとか、人づくりにも
活かせるものですし、

若いうちからこのような考え方を学べるのって
すばらしい!と感じました。

3Dプリンタまではいかなくても、
R&Dの授業は日本でも、どんどん取り入れてほしいですね!

ここにもありましたよー3Dプリンタ(笑)

 

こちらの記事も合わせてごらんください!

⇒オランダ教育ワークショップ開催!!

①視察1校目 生徒の主体性、自主性を伸ばす
⇒②視察2校目 ものづくりを学べる研究開発授業 
⇒③視察3校目 キャリブレーションのプロ
⇒④視察4校目 オランダもかつては・・・